私は、今年54歳独⾝。
東京でデザイン事務所を経営している。

仕事の関係で、⼀昨年⼤ヒットしたガッキーとかいう
⼥優さんが主演している連ドラのDVDを⽔曜⽇までに
⾒なければならなくなった。

普段テレビを⾒ない私は、ガッキーと⾔われてもピンとこず
正直、めんどくさいと思っていたが、
第5話まで観たところで涙が⽌まらなくなった。


私の⺟は、去年90歳と半年で⽼衰で亡くなった。
⺟は、佐世保で弟夫婦と孫に囲まれて暮らしていた。
私は、忙しさにかまけてここ数年⾥帰りしていなかったが、
さすがに⺟の90歳の誕⽣⽇には佐世保に帰った。

⺟は、90歳には⾒えないほど元気だった。
「あんたまだ結婚せんとね?」
「もう無理やろ、おいも、よかおじいちゃんばい。」

「そうね、つまらん。今⽇は、⽕曜⽇けんハグばしてくれんね!」

「何ば⾔いよっとね90歳にもなって。そがんとせんでよか!」
私は、⺟のハグを断った。なぜ⽕曜⽇だからハグなのか?

そんなこと深く考えもしなかったし、そんな話をしたことすら忘れていた。


⽉曜⽇そのDVDを⾒始めた。
以外と⾯⽩くてあっという間に第5話になった。第5話で
「⽕曜⽇はハグの⽇」という話が出て来た。

とってもキュンキュンする話のはずなのに、
私は涙が⽌まらなくなっていた。

「⽕曜⽇はハグの⽇」なのだ。

⺟はドラマ好きだったことを思い出した。
だから、「今⽇は、⽕曜⽇けんハグばしてくれんね!」だったのだ。

思えば⺟とちゃんと話をしたのはそれが最後だった。
今⽇は⽕曜⽇。
私は、佐世保に墓参りに来ている。

「ごめんねお⺟さん。ハグぐらいしてやればよかったね。でもありがとう。
『ハグばしてくれんね!』って⾔うてくれたけん。
結婚してみようって思うごとなったばい。
54歳ばってん、婚活してみるけん。」